拘束時間は長いけど給料がいいので割のいいバイトになると人が集まる。
6時間毎に食事ができて、飲み物やスナックも出来たばかりのcostcoからパレットのまま大量に山奥まで運び込まれている。人の動きと共に移動してきたサイクルが太古の森の中でおかしな光景を作っていた。
今まで作る側で働いたけけど、今回はフィルムの中での些細な仕事をした。
場所はカウアイの島のほぼ中央にあり、入るゲートは私有地の為いつも閉まっているWaialralreの奥地で、そこは地球の中でもかなり雨の多い山岳の密林。
そこに総勢600人を何台ものスクールバスやトラックが往復して、山を越え川を渡り連れて行く。
大雨でぬかるんだ現場でも動けるようにスタッフはゴムのカーバーオールに靴の上から履くミッキーの足のようなゴムブーツ。兵隊や農夫の格好した人達とみんなで泥だらけになって仕事した。
参加した映画は擬似的に作られた完全にshowbizの世界。撮影側はほぼ全員が白人で撮られる側は主人公の白人&仲間 vs カラード。作り込みにかけてはこだわりからフレームに邪魔なものは切り倒し、必要ならセットを作り、燃やして爆破する。大資本が前提で、物事の運び方はものすごいハリウッドだと感じた。
出番への対応は今までに無い新境地だったが、現場に参加して普段は入れない秘境を目の当りにして過ごせた事はとてもラッキーだった。待ち時間に山々やアンクルをスケッチしたのは楽しかったし、メイクやセット、衣装の人をはじめ色んな人と知り合い話せたことは忘れかけていた事を思い出した。ロコ達と共に過ごしたのはとてもいい思い出になったし、全てがいい経験だった。
様々なことにふれて自分に何が出来るのか考えるいい機会にもなり、撮影現場同様に足元が緩いことを学んだ。
少年がエアーガンで打ち合いサバイバルゲームに夢中になったのは本能なのだろうか?
こんな姿をしているが本当に殺し合う戦争を知らずに格好だけで笑ってしまう。
行き帰りのバスで隣だったbradhと話すと「アーミーでイラクに行って銃を使って人を殺した。まだ従軍が一年間残ってるからアーミーに戻らなきゃならない。」とうつむいて言う彼の現実は中東であり、兵を引き上げない現場を想像すると耳の中を高周波の音が突き刺さって耳鳴りがした。
自分の意志でなく何者かの命令によって殺し合いをする為に死と背中合わせに立ち向かうのは切ない。
戦闘シーンを撮るのでジャングルで待機していた時に脳裏を過ったのは、もしこれが本当の戦争で殺し合いだったらどう動くだろう? ずぶ濡れになりながら雨のやまない泥だらけの戦場で持久戦を想像した。
我に返ると目の前には何百年?何千年?何万年?どれだけの時間が流れたのか分からない野生が潜む森林がある。
見上げると撮影の為の背景に切り開かれた竹藪は空を覆うように高い。
濡れた枝葉の間から微かに射し込む陽光は立ち込める霧に浮き上がり、照らされた極太な竹の節々は青緑に輝いていた。